NBAのスター選手の名前が歌詞に織り込まれたり、彼らにまつわるエピソードが歌われている楽曲を、ジャンルを問わず紹介します。ヒップホップからポップ、ロックまで幅広い曲を取り上げ、それぞれの曲名やアーティスト、リリース年、言及されている選手、歌詞の一部とその和訳、そして背景解説をまとめました。

Number 23 – Jelly House & i love parodies (2025年)

  • リリース年: 2025年4月17日
  • ジャンル: Comedy Rap/ミーム系ヒップホップ
  • 言及されているNBA選手: レブロン・ジェームズ(背番号23)
  • 歌詞の抜粋 “Wearin’ number twenty-three, I’m the king you  came to see…”
    和訳: 「23番を背負って王が登場 みんなが見に来たレブロンだ」
  • 背景と解説: 2025年4月17日に TikTok へ30秒のサビ動画が投下されるや否や #number23 ハッシュタグが急拡散し、わずか7日で関連投稿4,100万件・累計視聴14億超を記録。Jelly House 本人アカウントの最初の投稿は 170万超「いいね」を獲得しました。ユーザー参加型の “Finish the lyrics” チャレンジ動画やレブロン・ジェームズのハイライト映像と組み合わせた応援リールが連鎖的に生成され、ミームとして定着しました。音源は配信初日に Spotify と Apple Music でも解禁され、Spotify US デイリー・バイラルチャートで 4/22 付30位圏に初登場。Apple Music の “New in Hip-Hop” プレイリストにも即日追加。曲調はスタジアム DJ を意識した 808キック+ホーンのファンファーレで、「Wearin’ number twenty-three」というコール&レスポンス型フックがバスケ観戦動画と相性抜群。コメディラップで “rizz” 系ミームを量産してきた Jelly House と、パロディ職人 i love parodies のコラボにより生まれた “レブロン賛歌 × ネットスラング” という二重のフックが若年層を直撃しました。その勢いは YouTube へも波及し、公式オーディオは公開3日で再生5万超、本人チャンネルのショート動画は24時間で6万ビュー。NBAプレーイン/プレーオフ期間と重なったタイミングも追い風となり、レイカーズファンの “勝利祈願ソング” としても使われています。今後は Billboard “Hot 100” エントリーや NBA 公式コラボリミックスが噂されており、ネット発バイラルから本流チャートインへ至るかが注目ポイントです。
  • 試聴リンク: SpotifyYouTube

Basketball – Kurtis Blow (1984年)

  • リリース年: 1984年
  • 言及されている選手: “Dr. J”ことジュリアス・アービング、モーゼス・マローン、ウィルト・チェンバレン、マジック・ジョンソン、ラリー・バード、ピストル・ピート(ピート・マラビッチ)、ビル・ラッセルなど
  • 歌詞の抜粋: “Just like I’m the king on the microphone / so is Dr. J and Moses Malone.”
    和訳: 「俺がマイクの王様であるように、ドクターJとモーゼス・マローンも(コートの王様さ)。」
  • 背景と解説: ヒップホップのパイオニアであるカーティス・ブロウが、自身の大好きなスポーツであるバスケットボールについて歌った名曲です。彼は「バスケットボールは俺のお気に入りのスポーツ 」と語り、スラムダンクやアリウープ、ピック&ロールなどのプレーが好きだと歌っています。その上で各バースでは当時のNBAのスター選手たちの名前を次々と挙げて称賛しており、1980年代までの殿堂入り級のプレーヤーが20人以上も登場します。例えば歌詞中にはドクターJ(ジュリアス・アービング)やモーゼス・マローンといったレジェンドから、ラリー・バードやマジック・ジョンソンまで、NBA史に残るスターの名がリズミカルに織り込まれており、当時のNBA人気とヒップホップ文化の結びつきを象徴する一曲となっています。

Magic Johnson – Red Hot Chili Peppers (1989年)

  • リリース年: 1989年
  • 言及されている選手: マジック・ジョンソン(曲名にも使用)、エイシー・グリーン、ジェームズ・ウォージー、(歌詞中でロサンゼルス・レイカーズの選手たち)
  • 歌詞の抜粋: “L. A. Lakers, fast break makers / Kings of the court, shake and bake all takers / Back to back is a badass fact, a claim that remains intact / M-A-G-I-C, see you on the court…”
    和訳: 「LAレイカーズ、速攻の達人たち / コートの王者、揺さぶりかけて全ての相手を打ち負かす / “バック・トゥ・バック”は揺るがぬ事実、連覇の称号は今も健在 / M-A-G-I-C、コートで会おう…」
  • 背景と解説: ロックバンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズ(RHCP)によるこの曲は、その名の通りNBA屈指の名選手マジック・ジョンソンと彼が率いた1980年代のロサンゼルス・レイカーズに捧げられた楽曲です。アップテンポなファンクロックに乗せて、「紫と金」のユニフォームに身を包んだ当時のレイカーズの強さが称えられています。歌詞には「エイシー・グリーンからハイタッチを受ける」や「ウォージーのトマホークダンク」といったフレーズが登場し、さらには「トリプル・ダブルの化け物が街にやって来る」といった表現でマジックの活躍ぶりを描写しています。1987年・1988年にNBA連覇を果たした“ショータイム”レイカーズの華麗さをそのまま音楽で表現したような曲であり、バンド自身も大のレイカーズファンとして知られています。この曲を通じて、当時リーグを席巻したマジックとレイカーズへの愛情が感じられます。

That’s How I Beat Shaq – Aaron Carter (2001年)

  • リリース年: 2001年
  • 言及されている選手: シャキール・オニール(“Shaq” シャック)
  • 歌詞の抜粋: “Put it in the hoop like slam (slam) / I heard the crowd screaming out jam (jam) / I swear that I’m telling you the facts / ’Cause that’s how I beat Shaq (boom)”
    和訳: 「ボールをリングに叩き込んだ(スラムダンクのように) / 観客が「決まった!」と叫ぶのが聞こえた / これは本当にあったことなんだ / ―こうしてオレはシャックに勝利したのさ。」
  • 背景と解説: アーロン・カーター(バックストリート・ボーイズのニック・カーターの弟)によるポップラップ曲で、タイトル通り「こうして僕はシャックに勝ったんだ」と少年がNBAスターのシャキール・オニールとの1対1に勝利する夢のような物語を歌っています。2001年にリリースされ、当時13歳だったアーロンがコミカルにシャックを倒す様子を歌い上げました。曲の中では、シャックとの対戦でフェイントを駆使しシュートを決める様子が描かれ、最後には大観衆の声援を浴びる展開となります。ミュージックビデオには実際にシャック本人も出演しており、少年の妄想のようなストーリーにユーモアを添えています。リリースにあたってシャック本人から公式に許可を得ており、NBAスターとティーンポップの異色コラボとして当時話題を呼びました。

Promiscuous – Nelly Furtado feat. Timbaland (2006年)

  • リリース年: 2006年
  • 言及されている選手: スティーブ・ナッシュ
  • 歌詞の抜粋: “Is your game MVP like Steve Nash?”
    和訳: 「あなたの“ゲーム”はスティーブ・ナッシュみたいにMVP級かしら?」
  • 背景と解説: ネリー・ファータドがティンバランドを客演に迎えて大ヒットさせたポップ/R&B曲「プロミスキュアス」は、男女の掛け合いによる官能的な内容で知られますが、その歌詞中で当時NBAのトップ選手だったスティーブ・ナッシュの名前が登場します。ネリーが歌う “Is your game MVP like Steve Nash?”(あなたのゲームはスティーブ・ナッシュみたいにMVP級?) というラインは、相手男性の腕前を挑発的に問いかけるフレーズです。この曲がリリースされた2006年前後、ナッシュはフェニックス・サンズで2年連続シーズンMVP(2005年・2006年)に輝いており、歌詞中の「MVP like Steve Nash」はそのタイミングを巧みに活かした時事的な比喩と言えます。ポップソングの中にバスケットボールのMVPを引用する意外性も手伝い、リスナーの印象に残る仕掛けとなりました。

Kobe Bryant – Lil Wayne (2009年)

  • リリース年: 2009年
  • 言及されている選手: コービー・ブライアント
  • 歌詞の抜粋: “Kobe doin’ work, 2-4 on my shirt / He the greatest on the court, and I’m the greatest on the verse.”
    和訳: 「コービーはコートで仕事をする(背番号24のユニフォームを着て) / 彼がコート最強なら、俺はリリックで最強だ。」
  • 背景と解説: リル・ウェインが2009年のNBAファイナル直前に発表した曲で、ロサンゼルス・レイカーズのスーパースター、コービー・ブライアントへのオマージュとして制作されました。当時コービーは自身の4度目の優勝を目指しており、ウェインは「4度目のリングを獲りに行く様は初優勝のようだ 」とラップしてコービーの飽くなき闘志を称えています。冒頭ではコービー本人や解説者の肉声もサンプリングされており、コービーがいかに万能で“アサシンのメンタリティ”を持つ選手かと語る実況が流れた後にウェインのバースが始まります。リリックには往年のレイカーズの名選手カリーム・アブドゥル=ジャバーへの言及(「輝きを手に入れろ、カリームのためにも」 )や、コービーの愛称「ブラックマンバ」も盛り込まれ、まさにコービー賛歌とも言える内容です。ウェイン自身も「自分はリリックの上ではコート上のコービーと同等に最強だ」と豪語しており、トップラッパーとトッププレーヤーのプライドが重ね合わされた楽曲になっています。

Michael Jordan – Kendrick Lamar feat. ScHoolboy Q (2010年)

  • リリース年: 2010年
  • 言及されている選手: マイケル・ジョーダン
  • 歌詞の抜粋: “I used to wanna be like Michael Jordan / Figured that I’d hit the NBA and make a fortune / Thank God for these rap recordings – I can ball like him on every verse and chorus.”
    和訳: 「昔はマイケル・ジョーダンみたいになりたかった / NBA入りして大金を稼ぐんだって思ってた / でも今はラップの録音があるおかげで――毎バース毎コーラスで彼みたいに“ボールで”輝ける。」
  • 背景と解説: ケンドリック・ラマーが無名時代の2010年に発表したミックステープ『Overly Dedicated』収録曲で、シカゴ・ブルズの伝説的選手マイケル・ジョーダンの名を冠した楽曲です。タイトルどおり歌詞にもジョーダンへの言及があり、ケンドリックは「自分も昔はジョーダンのようにNBAで成功したいと願っていた」と告白しています。実際に曲中では「ジョーダンみたいになりたかった。NBAに入って一財産築くんだと考えてた」とラップし、しかし今では「ラップという形で毎曲ごとにジョーダンのように活躍できている」と続けています。これは、ジョーダンがバスケ界で成し遂げた偉業を、ケンドリックが音楽の世界で成し遂げようという抱負にも解釈できます。当時新人だった彼にとってジョーダンは究極の成功の象徴であり、その名前を曲名に掲げることで「史上最高(GOAT)を目指す」というヒップホップ的な自己主張をしていると言えるでしょう。ケンドリックと同じ西海岸出身のScHoolboy Qも客演し、「ジャンプ力がすごい(=ラップでも突出している)」といった趣旨のバースを乗せており、若き才能二人が“バスケと同じくらい熱い競争心”を音楽で表現したトラックです。

Kobe – Chief Keef (2012年)

  • リリース年: 2012年
  • 言及されている選手: コービー・ブライアント
  • 歌詞の抜粋: “I’ve been ballin’ so damn hard, I swear I think that I’m Kobe.”
    和訳: 「あまりにも激しく“ボール”してるから、自分がコービーだと本気で思えてくるぜ。」
  • 背景と解説: シカゴ出身のラッパー、チーフ・キーフが17歳で発表した楽曲「Kobe」は、自身のラップゲームにおける成功をNBAのスーパースター、コービー・ブライアントに喩えたものです。タイトルや歌詞からも明らかなように、チーフ・キーフは「金を降らせ(札束をばら撒き)ながら、ラップのゲームをまるでコービーのようにプレイしている」と豪語しています。若くしてシーンに登場し大きな衝撃を与えた彼の姿は、10代でNBAデビューし伝説的キャリアを築いたコービーと重ねられています。実際、チーフ・キーフは「俺はコートのコービーで、他のラッパーたちは敵チームだ」といった趣旨のリリックを繰り返し、自らの地位を誇示しています。荒々しいビートの上で「自分はコービーだ」と宣言するこの曲は、当時のヒップホップシーンにおいても大きな存在感を示し、以降、多くのラッパーがNBA選手の名を借りて自己を誇示するスタイルが定着していきました。

White Iverson – Post Malone (2015年)

  • リリース年: 2015年
  • 言及されている選手: アレン・アイバーソン
  • 歌詞の抜粋: “I need that money like the ring I never won… I never won (White Iverson) / When I started ballin’ I was young.”
    和訳: 「手に入れたいんだ、俺が一度も勝ち取れなかった“リング”(=優勝指輪)と同じくらいの金を…(※繰り返し:ホワイト・アイバーソン) / バスケ(=成功)を始めた頃、俺はまだ若かった。」
  • 背景と解説: ポスト・マローンのデビューシングルとなった「White Iverson」は、NBAのスーパースターだったアレン・アイバーソンへのオマージュと自身の境遇を重ね合わせたトラップソングです。タイトルの“White Iverson”は「白人のアイバーソン」という意味で、ポスト・マローンが髪を編み込んだとき自分の風貌がアイバーソンに似ていると思いついたことから名付けられました。歌詞では「若い頃から“ボール”していた(成功の道を歩み始めていた)」と語り、サビでは「俺には、アイバーソンが決して手にできなかった優勝リングのような大金が必要なんだ」とメロディアスに歌っています。これは、偉大な選手でありながらNBA優勝だけは成し遂げられなかったアイバーソンのキャリアと、自分もまだ成功の途中であるというポスト・マローン自身の姿を重ねたラインです。実際にこの曲がヒットした後、アイバーソン本人と対面する機会も生まれ、アイバーソンが楽曲を気に入ったことを示すエピソードも話題となりました。「White Iverson」はポスト・マローンの出世作となり、彼の名とNBA文化が強く結びつくきっかけとなった楽曲です。

Stephen Curry – Soulja Boy (2015年)

  • リリース年: 2015年(MVは2015年公開、シングルは2016年発売)
  • 言及されている選手: ステフィン・カリー(および歌詞中にレブロン・ジェームズ)
  • 歌詞の抜粋: “Shootin’ 3’s from half court, make it look easy / I cross LeBron, shot a 3 in his face / Steph Curry – I be Curry with the shot, boy.”
    和訳: 「ハーフコートからスリーを放っても、楽々決めてみせる / レブロンをクロスオーバーで抜いて、彼の顔面で3ポイントシュートを沈める / ステフ・カリー――俺はシュートがカリー並みに決まるぜ。」
  • 背景と解説: 「クランク・ダット」で知られるソウルジャ・ボーイがゴールデンステート・ウォリアーズのスーパースター、ステフィン・カリーに触発されて制作した楽曲です。2015年当時、カリーはNBAファイナル優勝とシーズンMVPを達成し一躍時の人となっており、そのプレースタイルと人気から様々なメディアで称賛されていました。ソウルジャ・ボーイはこの曲で「まるで自分がステフィン・カリーになったかのような気分だ」と繰り返し歌い、実際のカリーさながらにロゴ付近(コート中央)から3ポイントを決めたり、レブロン・ジェームズを抜き去ってシュートを決めるという誇張表現で自身の絶好調ぶりを誇示しています。ミュージックビデオではソウルジャ・ボーイがカリーのユニフォームを着用し3ポイントシュートを打つシーンもあり、カリー本人もインタビューで「曲は聞いたけど自分のプレイリストには入っていないかな」と苦笑交じりにコメントしています。ヒップホップにおけるNBA選手の名前の使用例としてはストレートに選手本人をテーマにした珍しい一曲で、カリーの当時の突出した存在感が伺えるエピソードとなりました。

Mo Bamba – Sheck Wes (2018年)

  • リリース年: 2017年
  • 言及されている選手: モハメド・“モー”・バンバ
  • 歌詞の抜粋: “Oh! F**! S***! (B****!) / I got hoes callin’ a young n**** phone / I be ballin’ like a motherfin’ pro / I be ballin’ like my n* Mo (Bamba).”
    和訳: 「オー!くそっ!マジかよ!(…) / 女の子たちがオレの電話に次々かけてくる / オレはまるでプロのようにバスケ(=稼ぎ)で“ボール”を回している / オレは仲間のモー・バンバみたいにボールを扱ってるぜ。」
  • 背景と解説: シェック・ウェスのデビュー曲にして大ブレイクのきっかけとなった「Mo Bamba」は、タイトルにNBA選手モハメド・バンバの名前を冠した異色のヒット曲です。シェック・ウェスとモー・バンバは幼馴染であり、彼が曲名に友人の名前を使ったことで注目を集めました。荒々しいビートとミニマルなフローで構成されたこの曲は、リリース当時SNSやクラブで爆発的な人気となり、全米チャートでも上位に食い込みました。歌詞自体はバンバ本人のプレイ内容に深入りするものではありませんが、サビで「俺は仲間のモー・バンバみたいに(調子よく)ボールしてるぜ」と繰り返すことで、友人であるバンバへの愛称賛歌となっています。ミュージックビデオやライブでは観客が「モー・バンバ!」と大合唱する様子が見られ、当のモー・バンバもこの曲の成功を喜んだと言われています。結果的にこの曲は、モハメド・バンバという新人選手の名前を一躍有名にし、NBAとヒップホップの新たな関係性を象徴する存在となりました。

Wilt Chamberlain – G Herbo (2019年)

  • リリース年: 2019年
  • 言及されている選手: ウィルト・チェンバレン
  • 歌詞の抜粋: “Then I walked in the house one day with a Wilt Chamberlain, all hundreds / Since my first hundred K I was focused and kept savin’, all hundreds.”
    和訳: 「ある日家に“ウィルト・チェンバレン”(=100)を持って帰った。全部100ドル札だ / 最初の10万ドルを手にして以来、集中して貯め続けてきた。全部100ドル札でな。」
  • 背景と解説: シカゴ出身のラッパー、G・ハーボ(ジー・ハーボ)が2019年のミックステープで発表した楽曲で、タイトルにNBAの伝説ウィルト・チェンバレンの名を冠しています。ウィルト・チェンバレンと言えば一試合100得点の史上最高記録で有名ですが、G・ハーボはその“100”という数字をスラング的に用いて「10万ドル」を意味する隠喩に仕立てました。歌詞では「ある日家にウィルト・チェンバレンを持ち帰った(=10万ドル稼いだ)」とラップし、それ以降も札束を貯め込んできたことを自慢しています。曲全体を通じて、チェンバレンの象徴である「桁外れの100」という数字が金銭に置き換えられており、ヒップホップにおける富と成功を誇示するスタイルにNBAのレジェンドを巧みに結び付けた内容となっています。タイトル以外に直接チェンバレンのプレー描写はないものの、“100”という記号が持つインパクトによって、ウィルトの偉業と自らの成功をオーバーラップさせたユニークな楽曲です。

24 – Money Man feat. Lil Baby (2020年)

  • リリース年: 2020年
  • 言及されている選手: コービー・ブライアント(背番号24番にちなむ)
  • 歌詞の抜粋: “R.I.P. Kobe Bryant, R.I.P. 24 / I can make a cool 50k in less than 24 hours.”
    和訳: 「安らかに眠れ、コービー・ブライアント。安らかに、24番よ / 俺なら50K(5万ドル)だって24時間もかからず楽に稼げるぜ。」
  • 背景と解説: マニーマンとリル・ベイビーによる楽曲「24」は、2020年初頭に急逝したNBA伝説の選手コービー・ブライアントへのトリビュートソングです。タイトルの「24」はコービーの背番号に由来し、リリース日は彼の事故死から約1か月後というタイミングでした。歌詞中では冒頭から「R.I.P. Kobe… R.I.P. 24」とコービーへの追悼の言葉が捧げられ、曲全体を通して彼への敬意が表明されています。リル・ベイビーのバースでは「子供の頃、トラップハウスでコービーがダンクするのを見て育った」などと語られ、若い世代のラッパーにもコービーが大きな影響を与えていたことが窺えます。またミュージックビデオにはコービーの背番号「24」のジャージや“ブラックマンバ”を象徴する黒いヘビのイメージが随所に登場し、映像面でもコービーへの追悼とリスペクトが込められています。リリース後、この曲はBillboard Hot100にランクインし、コービーへの想いが広く共有されたヒップホップ・コミュニティの反応を象徴する作品となりました。

Giannis – Freddie Gibbs & Madlib feat. Anderson .Paak (2019年)

  • リリース年: 2019年
  • 言及されている選手: ヤニス・アデトクンボ(“Greek Freak”)
  • 歌詞の抜粋: “Real G’s move in silence like Giannis.”
    和訳: 「本物のG(ギャング)は静かに事を運ぶのさ――まるで“Giannis”(ヤニス)の頭文字Gが発音されないようにな。」
  • 背景と解説: インディアナ出身の実力派ラッパー、フレディ・ギブスが鬼才Madlibのプロデュースで発表したアルバム『Bandana』収録曲で、タイトルはミルウォーキー・バックスのスーパースター、ヤニス・アデトクンボのファーストネームから取られています。注目すべきはフレディ・ギブスの放つライン「本物のGは静かに動く、まるでヤニスのGのように 」というパンチラインです。一見するとヤニスへの直接的な言及ではありませんが、英語で“Giannis”の頭文字Gは発音されず「ヤニス」と読むことを踏まえた高度な言葉遊びになっています。これはかつてリル・ウェインが残した名ライン「Real G’s move in silence like lasagna(本物のGは静かに動く——ラザニアの中のG[=発音しない]のように)」を踏まえたオマージュでもあり、ヒップホップファンから大いに賞賛されました。また曲名にヤニスの名前を掲げたことについてギブスは、ヤニスがNBAで新人時代から大成していったように、自身も音楽業界で不屈の努力を重ねてきた思いを重ねたと語っています。結果として「Giannis」は、ヤニス本人の代名詞“Greek Freak”も歌詞中に織り込みつつ、ヒップホップにおけるバスケットボール愛とワードプレイの巧みさを示す秀逸なトラックとなりました。

各楽曲には、NBA選手の名前が単なる話題作り以上に巧みに使われています。アーティストたちは選手の背負う物語や特徴を歌詞に織り交ぜることで、自身のメッセージを強めたり、リスナーの共感を引き出しています。このようにスポーツと音楽のクロスオーバーは多くの名曲を生み出しており、NBAとヒップホップ/R&Bは特に深い結びつきを持つ文化となっています。今回紹介した楽曲群は、そうした相互作用の中で生まれた一例と言えるでしょう。